ジャック・ケッチャム『閉店時間』

閉店時間 (扶桑社ミステリー ケ 6-9)

閉店時間 (扶桑社ミステリー ケ 6-9)

我らがケッチャム先生の日本オリジナル中編集。ケッチャマーの人は黙って読むがよい。そして、死ぬがよい*1
相変わらずのケッチャムであるが、いつものような生理的に受け付けないほどの嫌なシーンというものは存在しないので、ケッチャム初心者にも非常にオススメ。強いて言えば表題作である閉店時間は後味が悪い。いきなり男女の甘い恋愛模様が語られるので「あれあれ、どうしちゃったのさ!」とあたいガッカリしちまってたんですが、読み進めていくと不条理極まりないケッチャム節満載でした。あとがきによると、この作品は作者自身の実体験に基づいているそうな。

そうか……なんていうか頑張って生きろよ、ケッチャム!

女弁護士とキジルシ男女三人組との人生最悪の夜を書いたヒッチハイクは、スカッと爽快な作品に仕上がっている。車が故障したのでヒッチハイクを試みるが、停まったのは最低最悪なキチガイ野郎。こんな車に乗ったらナニをされるかたまったもんじゃない、そこに通りがかったのは昔の同級生(♀)。助けてもらって、昔の話に花が咲くかと思いきやさあ大変。その同級生の方が更にキチガイだったよ!
ラストはケッチャム先生の新境地。こういうの書けばもっと人気出るよ!

他にも鬼畜犯罪者カップルと、それに対する天罰「雑草」*2や、男の友情と鬼畜レイプ一族ノワール・ウエスタン「川を渡って」の二篇が収録されている。どれも、不条理であり、善・悪どちらも幸福にならない。ジャック・ケッチャムという作家の魅力が存分に詰まった作品である。

*1:言いたかっただけ

*2:作者曰く「これまでに書いたうちでもっとも不快な作品」だそうな